グローバルな場で日本の外食産業の魅力と課題を見つけよう!
万博を舞台に、日本の外食産業の魅力と課題を調査し、食文化の未来と国際的な可能性を探ったレポート
私たちは、2025 年大阪・関西万博の宴パビリオンにおいて、日本の外食産業の現状
を知り、魅力と課題を明らかにするために現地調査を実施いたしました。万博という
国際的な舞台で、日本人と外国人が協働する現場で何が起きているのか。そして、そ
こから見えてくる日本の食文化の未来とはなのか。
現場で感じた魅力
まず、運営側の企業幹部、人事の方々が感じている魅力は、食と外食産業の2つのジャンルに分けられます。食の魅力について、 「人にとって食べることは 1日3回欠かせないもの。食糧難や選択肢がない時に美味しいものを食べると幸せになれる体験をお客様に提供できる」という食の本質的価値についてのお話をいただきました。また、外食産業の魅力について、 「衣食住の中の1つである食を自分たちでお客様に提供し、楽しみを与えられること」というお話も頂きました。
次に、現場で働くスタッフが感じた魅力として、日本人スタッフからは「様々な世代、様々な国籍の方との交流ができる」 、 「丁寧な言葉遣いや臨機応変な対応力が身についた」 、 「昔よりも労働環境がよくなっている」 という成長実感の声が聞かれました。また、グローバルインターンシップで参加された外国人スタッフの方々は、「日本語能力が向上した」 「日本人の親切さを実感できた」 「日本の食文化についての知識が増加した」と語っており、単なる労働体験を超えた文化交流の価値を見出していることが分かりました。
現場で起こっている課題
1つ目は、宴パビリオンを運営する上での課題です。国際イベントを初めて運営する企業は多く、資金調達、店舗選定、人員配置など明確な運営方法が分からないままという現状があります。
2つ目は、外食産業全体の課題です。現在進んでいる少子高齢化による人手不足により、タイミーなどの短期雇用サービスに依存せざるを得ず、その店舗本来の個性が失われつつあります。また、セルフレジやロボットの導入により労働環境の改善は進む一方で、外国人観光客が求める「日本らしさ」が失われるという深刻な矛盾が生じています。さらに、外食産業では 10 年で 100 社中 7割が消失するという厳しい現実があり、付加価値を確立できない企業は淘汰される一方で、トレンドだけに頼った経営では本当の美味しさとその食本来の魅力が伝わりにくくなってしまっています。
3つ目は、日本の食文化の発信の課題です。宴パビリオンに来たお客様はほとんどが日本人であり、日本の食と外食産業の魅力をどのように世界に伝えていくかがこれからの課題となってきます。
4つ目は現場で働くスタッフが感じた多言語・多文化コミュニケーションの課題です。現場では、言語の違いによるコミュニケーションの困難や、長時間労働による身体的負担など、リアルな課題も浮き彫りになりました。特に混雑時の安全確保や、多言語対応は重要な課題となっています。
グローバルな時代での日本の外食産業の魅力
まず、食という観点から、日本の外食産業が世界全体の課題である SDGs を達成するために取り組んでいることを魅力のポイントとして考えました。
大阪外食産業協会では、宴パビリオンで出た廃食油の一部をハンドソープに作り変えたり、航空燃料として利用したりするなどの取り組みが行われていました。伊藤ハムでは、ソイミート(大豆ミート)を使用した OKONOMIYAKI 風ハンバーガーや包みピザなどの動物性原料を使わない革新的な商品が提供されていました。大起水産でも、食用油の回収による航空燃料への転用、紙容器・紙ストローの使用など、環境に配慮した商品の開発が進められていました。
日本の外食産業の未来の可能性
私たちの調査結果は、日本の外食産業が現在、3つの重要なバランスを取りながら進化していく必要があることを示しています。
1つ目は、国際化とローカライズのバランスです。外食産業の企業は、長い歴史を持つ日本の食文化が抱える本質的価値を、競争率の高いこの社会の中でどのように生き残らせるのかという課題を抱えています。また、同質性が高い日本の外食産業の職場では、多様性をもつ外国人労働者をどのように受け入れ、どのように日本人のアイデンティティを伝えていくかという課題が存在しています。国際化とローカライズは、対立する概念ではなく、適切に組み合わせることで相乗効果を生み出すものとなっています。国際化によってブランドの統一性を確保しつつ、ローカライズによって各市場の特性に適応することで、企業はより効果的なグローバル展開を実現できると考えました。
2つ目は、効率化と人間性のバランスです。先ほど述べた人手不足による機械の導入が進み、どのお店も業務の効率化が上がり均一のクオリティを提供できる一方で、心を込めて行う人間ならではの接客サービスの消失、顧客体験の低下などの多くの課題も存在します。ロボットが人を置き換えるのではなく、人をサポートし労働環境を改善するためのツールとしての活用を進めていく必要があると考えました。
3つ目は、収益性と持続性のバランスです。今回の調査から、伊藤ハムや大起水産などが行っている SDGs の取り組みが単なるコスト削減ではなく、新たな付加価値創造の手段となっていることが分かりました。 「昔よりも社会的意義のあるものになっている」という企業側の証言が示すように、SDGs は外食産業のビジネスモデル転換を促す重要なヒントであり、地球環境や人間社会の未来と持続性の上に重要な役割を果たしていると考えました。
まとめ
万博という国際舞台で調査した経験から、日本の食文化が世界に誇れる独自性を持ちながらも、持続可能で多様性に富んだ未来志向の発展可能性を秘めていることが分かりました。また、日本の食文化が単なる料理の提供を超えて、総合的な文化体験の提供へと進化していく姿を見ることができました。食文化が国際交流の架け橋となり、 世界の人々に幸せを届ける力を持っていることを私たちは確信しています。
(記者:関西大学 汪菲、久保みのり、小堀祥太)